SPECIAL EDITION

SPECIAL EDITIONは日替わり月替わりのメンバーで毎日更新予定📖いろんなひとに読んでもらえたらいいなと思っています。みんなの毎日にぜひよろしくね。

③EPとアルバム、コステロとアートスクール 。/ littlegirlhiaceロングインタビュー

 

*聞き手:ヨシオテクニカ

*編集、文責:ふにゃっち

 

●録音だったり作品を作っていく過程について話を聞いていきます。ふにゃっちさんは基本的にほとんど一人で演奏して録音をしていますよね。時系列でいうと「垢消し」はアコギの弾き語り作品で、その次くらいからはすでに一人で多重録音でバンドサウンドを構築していくスタイルだったわけですか?

「そうですね。最初はガレージバンドiPhoneにインストールして、iPhoneのマイクを使って音を録って重ねていくっていうやり方で。機材とか知識とか、万全の状態を整えてから始めるぞ!みたいなやり方だといつまでも踏み出せないのは目に見えていたので、手元にあるものだけ使って、できる範囲でとにかくやってくぞ、みたいなことを考えてました。「頭悪そうな女子高生」「リトルガールハイエース」「悲しみたい症候群」「careless tears」とかあの辺がiPhoneで録音してた最初期ですかね」

●その頃はドラムもiPhoneのマイクで録ってたんですか?

「そうですね、ドラムセット付近の床にiPhone置いて」

●一人で多重録音っていうのはそれが初めてのこと?

「ほぼほぼそうですね」

●一人でやってるのは、手っ取り早いっていう話とかバンドに対してモヤモヤを感じていたっていう話と関係がある?

「手っ取り早いっていうのもあるし、一人のほうが意思決定とかフットワーク的な面でもシンプルだし身軽でいられるかなっていう。バンドって曲作ったり歌ったりする人がイニシアチブ取りがちで、かと思えば民主主義的な面もあったりするからややこしくて。僕は長らくドラマーとしてバンドに参加してばっかりだったから自分がメインで動くっていうことがほとんどなかったんですね。曲を持っていってもボツになったりとか。いつの間にかライブ日程が決まってたりとか。それは僕に主体性がないのも原因ではあったんだけど。自分で作った曲を自分で歌っていくのであれば自分でコントロールできない状態にはしたくないなって思ったので。だったら演奏も録音もミックスもリリースも自分ひとりでやって、上手くいっても失敗してもぜんぶ自分の責任というか。そういう感じでやりたいなぁっていうのは活動当初から思ってましたね」

●録音とか編集の技術っていうのは実際にやりながら習得していった感じ?

「やりながら覚えてってる感じですねぇ。最初はiPhoneガレージバンドだけで満足してたんですけど、段々「ここもうちょっと弄りたいのになぁ」って部分が出てきて、マックブックのガレージバンドに移行して、そこでも「ここもうちょっと弄りたいのになぁ」って部分が出てきたのでロジックプロに移行してそのまま現在に至ってます。ガレージバンドとロジックって割と似通ってるとこが多くて、ストレスなくスムーズに移行できた記憶があります。プラグインもそこそこ使えるものが揃ってるので、あとから買い足さなくてもまぁまぁのものを作れちゃうっていうのも大きいですね。なのでMac使ってて宅録ちょっと頑張ってみたいなぁって人だったら2万ちょいくらいの初期投資だけで済んじゃう部分があるのでロジックおすすめです」

●「リトルガールハイエース」という曲も最初はiPhone上で完結していた?

「サンクラに上がってるやつはそうですね、録音もミックスもiPhoneだけでやってました。EPに入ってる方はiPhoneからPCにファイルを移して、ロジック上でスネアとキックだけ後から重ね録りして、ロジックのプラグインで音を整えて、ベースも僕じゃなくてサナトリウムさんって人に弾いてもらったものに差し替えてあります」

●ひとりでやりたいと言いつつ、あの時期はふにゃっちさん以外のミュージシャンにも参加してもらってたのは何故でしょうか?

「それは当時の僕の演奏技術だったり録音技術を考慮して、ちゃんと弾ける人にお願いした方が作品としてより良い形でリリースできると判断したからですね。同じ理由で「エリカ」と「ギブ」のギターソロをイマダさんって人に弾いてもらったし、ベントラーカオルさんって人に何曲か鍵盤を弾いてもらいました」

●「ギブ」や「エリカ」は、ふにゃっちさんひとりで演奏してる曲とはまた違ったバンド感があって良いなと思います。そこから次の「アンファッカブルEP」や「リベンジポルノEP」では、またひとりに戻ったわけですけれど。

「その頃からはもう自分でもまぁまぁ弾けるように…違うな、まぁまぁ聴けるものが録れるようになってきたっていうのもありつつ、そのころは「ひとりでやりたい」っていう気持ちが強かった気がしますね。なんでか覚えてないんですけど、多分何かしらメンタル的な…(笑)。歌詞もなんかこう、内に内に籠ってるような。内面に沈み込んでいくような感覚が強い気がしますね。その反動もあって次に出した「GIRL MEETS BLUE」っていうアルバムではもうちょっと開かれた感覚というか。あのアルバムは一曲目の「meaningless」って曲だけ自分自身のことを歌って、そこから後の曲はすべてフィクションだったり二次創作的な曲にしようと思って作った記憶があります」

●「アンファッカブルEP」や「リベンジポルノEP」は確かにちょっと暗いトーンというか、思い詰めてる主人公みたいなイメージが強いですね。それに対して「GIRL MEETS BLUE」はもうちょっと爽やかでカラフルだったり、なによりアルバム然とした佇まいを感じます。それまで6曲収録のEPを4枚リリースしてきて、「GIRL MÉETS BLUE」を初めてのフルアルバムとして作ったわけですけど、そこには何か意識の違いはあるんでしょうか?」

 

EPとアルバム

「もうちょっといろんな人に聴いてもらえたらなぁと思って「GIRL MEETS BLUE」を作ったんですよね。ただ曲を集めただけじゃない一枚の作品として出すぞ!っていう気持ちというか体重を乗せて作ったというか。ちゃんと最後まで順番に聴いてもらえるように、自分なりに工夫しないとアルバムって作れないものだし。そういう「作品」を作りましたよっていう意思表示もありつつフルアルバムというフォーマットを選んだというか。もちろんEPを作ってる時だって曲順とか考えるけど、アルバム作ってる時の方がいろいろ考えるべき事が多いなって気がします」

●考えるっていうのは、アルバムのテーマやコンセプトを考えるっていう事?

「そうではなく。コンセプトやテーマっていうのはアルバムを作品として聴かせる手段の一つではあると思うけど、絶対に必要っていうものではないと思います。そういう話とはまた別の、例えば曲間のブランクとかアルバム全体の緩急とか統一感とか、そういう部分でEPよりもアルバムのほうが神経を使うというか。なのでしんどいけど、面白いですね、アルバム作るのは」

●ふにゃっちソングブックを見ると「サテラ」の歌詞から派生して「cloudy horoscope」と「それでいいさ」が生まれた、みたいな話も書いてあって、そういう作り方もアルバムならではの面白さなのかなぁと。EPは録って出しで、できたものをただ並べてリリースして、アルバムはもう少し腰を据えてひとつの世界を作ろう、みたいな意識の違いがある?

「そうですねぇ…そういうのもありつつ、なんだろうなぁ…。曲数が少ない音源はタイトルに「EP」をつけてリリースする、そのタイトルになったリードトラック的な曲は音源の1曲目に持ってくるっていう縛りが自分の中にあるんですね。その上で、「なんとかEP」っていうタイトルで出したいか、それとも「EP」をつけないタイトルでリリースしたいかっていうところもありますね。語感がいいじゃないですか、「アンファッカブルEP」とか「リトルガールハイエースEP」とか(笑)。そういうタイトル先行で、この作品名でEPなりアルバムなりを出したいな、みたいな感じで作ってるとこがありますね」

●割とタイトル先行というか(笑)。タイトル先行っていう話だと、曲を作る時もタイトルから先に作っていく場合があるんですよね?

「ありますね。「リトルガールハイエース」って曲は「リトルガールハイエースっていうタイトルの曲を作るぞ」っていうところから歌詞とかメロディを膨らませて作った、まさしくタイトル先行型の曲だったりしますし。たぶん最初にタイトルなりコンセプトがバシッと決まってた方が曲の方向性が定まりやすくてエネルギーを込めやすくて、強いものができるのかもしれないです」

●EPとアルバムの違いみたいな話に戻りますけど、個人的には6曲入りくらいのEPを何枚か続けてリリースしていくっていうのは、アートスクールに代表されるような2000年代前半の下北沢ギターロックバンドの文化というか。そういったものを彷彿とさせるようなスタイルも個人的には好きっていうところはありつつも、ふにゃっちさんの作品を初期から順番に聴いていくと、確かに「GIRL MEETS BLUE」からは聴きごたえが違うなっていうのはあって。それは単純に曲の数だけじゃない部分で、EPとアルバムっていうフォーマットの違いっていうのは確かにあるんだなぁと聴いてて思いました。初めてのフルアルバムとして「GIRL MEETS BLUE」をリリースして、反響みたいなものも違ったりしましたか?

「うーん。あの頃はアルバムリリースと並行してバンド編成でライブをやるようになった時期だったんですけど、どっちかというとそっちの反響の方が大きかった気がしますね。アルバム出した反応としては…「ちゃんとアルバムになってるね!」みたいな感想は結構もらえて、あぁアルバム作れるんだ俺、みたいな自身が少しついたくらいかな(笑)。あのアルバムをきっかけに間口というかリスナー層が広がったかっていうと、そこはちょっと、目覚ましい反響はなかったかなぁっていう…うーん(気まずい沈黙)」

●「GIRL MEETS BLUE」を出した当初は「いける!」みたいな手応えはあった?

「そうですねぇ、アルバムに先駆けてサンクラ公開した「アカネ」も割とウケてたし、もうちょっとイケるかなって気持ちはありましたね。そこは単純に力不足というか。でもまぁ自分の活動規模を考えると身の丈にあった反響だったとも言えるし…(考え込む)」

●リリースの順番でいくと「GIRL MEETS BLUE」に続いて2020年の春に「TELEWORK」がリリースされてますね。これはタイトルが示す通りの状況下で制作されたもの?

「そうですね。えーと、「GIRL MEETS BLUE」の時点からはもう竿ものや鍵盤に関しては自分の部屋で録音がほぼほぼ完結できる状態なんですが、ドラムとボーカルだけはスタジオに行かないと録音できないんですよね、住宅事情的な理由で。でもちょうど2020年始まったくらいから世の中がこう、録音するためにスタジオへ行くのもちょっと難しい状況になってしまって。その頃にはもう次の「hellsee girl」に相当するアルバムを作っていたところだったんですが、その制作が完全にストップしてしまったので、代わりに今やれる別の事やろうかなと思って。もう録音が済んで完成していた曲を掘り起こしてちょっと手直しというかミックスし直して出したのが「TELEWORK」ですね」

サウンドクラウドに公開されたりはしててもEPやアルバムには収録されてなかった曲があんなに存在してて、しかもなんで収録されなかったんだろうっていうくらい良い曲ばっかりで。

「なんで収録されなかったんでしょうねぇ…」

●(笑)。「SCHOOL-DAYS」だけはコンピ盤という形でリリースされてましたけどそれ以外にも、例えば「ロストハミング」みたいなキャリアのど真ん中にいてもおかしくないような曲もいっぱい入っていて、B面集みたいな匂いもなくて、ちゃんとアルバムとして成立しているなってすごく思いました。こんな隠し球いっぱいあったんすか?みたいな。

「うーん、なんでリリースしなかったんだろうなぁ…あっ」

●ん?

「えっと「TELEWORK」の曲はだいたい2015年くらいの曲なんですけど、その時期って多分「そういうすでにある曲よりも新しくできた曲を先にリリースしたい」みたいな気持ちがあって。新しくできた曲を「リトルガールハイエースEP」とか「エリカEP」として出してって、そうこうしてる間にリリースするタイミングを逃してしまって。そのまま結局お蔵入りしてたのを、2020年にこういう状況になってしまったので、じゃあこういうものを出すなら今なのかなぁっていう。あとは、この先もしかしたら状況がもっと酷くなって音楽活動とか以前に音源のリリースすらできなくなるかもしれないし、そうなる前に手元にあるものを出しておいた方がいいのかなっていう気持ちも「TELEWORK」をリリースする時にはありましたね」

●「TELEWORK」収録曲の他にも、もう完成してるけどリリースされないまま残っている曲っていうのは…。

「まだ何曲か残ってますね」

●(絶句)。

「でもあの、2002年くらいのシロップとかアートスクールのリリースペースってもっと凄かったじゃないですか。狂い咲いてるみたいな、生き急いでるみたいな。あれがやっぱりリスナー体験として強烈に残っていて。かっこいいなぁっていう。今の自分はその領域には達していないと思うし、もっと速いペースで頑張りたいなぁっていう気持ちはありますね」

●「クーデター」と「delayed」と「HELL-SEE」なんて、期間としては一年経ってないですもんね…。

「いやぁ本当に…。あのペースで、あれだけ充実した内容でっていうのはやっぱりちょっと異常ですよ(笑)。まぁ「delayed」は過去の曲を出したっていうのはあるけど。やっぱあの頃のあの人達は本当に凄まじかったんだなっていうのはこうやって曲を作るようになってからますます感じるし。なおかつ彼らはライブもガンガンやりながらリリースしまくってたわけですからね。全然ライブやってない僕とは状況が違うというか。本当は僕も世の中がこうなってなければライブしたかったんですけどね、LGHで…。そこはちょっとアレですけど「いっぱい曲を録って出したい」っていう今の自分のモチベーションって部分では、あの頃のアートとシロップの鬼気迫る活動ペースに非常に大きな影響を受けているのかなって思いますね。憧れというか」

●そういうふにゃっちさんも丸5年という活動期間でEP4枚とフルアルバム3枚、曲数で言えば50曲以上リリースしているわけですから、多作なほうだとは思いますよ。

「自分もいつまで音楽できるかわからない部分はあるし、できるうちにやっときたいっていうのはあるので…」

●例えばスランプとか、作詞作曲に行き詰まったりとかは?

「行き詰まったら、別の曲をやる(笑)。曲作りに煮詰まったら別の曲のミックスしたり、録音しにスタジオ行ったり、ミックスに詰まったらアコギ手に取って、ポロポロ弾いてたら新しい曲ができたり。勿論それにも行き詰まったらアニメ観たりエロゲしたりするし、音楽だけやってるわけではないですよ。今はまたアルバム作ってて、曲はもう12曲くらい出揃ってて、あとはもう録るだけっすね」

●社会状況がこういう状況になってなければ本当はまたバンド編成でライブする予定だったっていう話がさっきチラッと出てきたので、バンドの方のlittlegirlhiace(以下LGH)の話もしていきたいと思います。2019年の春先と夏くらいに何回かバンド編成でライブをやっていて、僕も2回くらい観させてもらって。すごく良いバンドで、みんとさんとモリゾーさんっていうリズム隊もカッコよくて。メンバーとはツイッターがきっかけで知り合ったんですか?

「きっかけはそうだったと思うんだけど、二人ともそれぞれ別のバンドで演奏してるのをライブハウスで観たことがあって、実際のプレイや佇まいがかっこいいなと思ってた人達だったので。もし自分がいつか自分の曲をライブハウスでバンド編成で披露する機会があったら二人にお願いできたらなぁと思っていて。特にみんとくんに関しては、彼がベースで僕がドラムとしてFragileFlowersのサポートに参加してライブする機会があって、その時も「かっこいいベース弾くなぁ」と思っていたので尚更」

●FragileFlowers、青鷗さんですね。

「すごく楽しかったし、いい思い出です。バンドって楽しいんだなって久しぶりに思えたっていうか。パーマネントなバンドではなく、あくまで単発的なものだったからそう感じられたのかもしれないけど。でもそこで得られた「バンド楽しい」って感触があったからLGHやってみようかなって思えた部分があるようにも思えるので、Fragile Flowersのサポートに参加できたのは割とターニングポイントだったかもしれないですね。それでいざLGHでライブするぞって機会に恵まれてみんとくんとモリゾーさんにお願いしたら引き受けてくださったっていう。みんとくんはグルーヴがガツンとありながらもクレバーというか、曲の根幹をしっかり支えつつも主張して欲しいタイミングではしっかり前に出てくれて、シンプルにガシガシ弾いてるだけでも聴かせてくれるしすごいベーシストですね。モリゾーさんは多分僕と同じくアヒトイナザワがルーツにありつつも、それだけじゃない幅広さとオリジナリティを獲得できているプレイヤーという印象で、要するにドラマーとして完全に僕の上位互換みたいな人です。あと、二人ともソングライターとしても素晴らしい人達なので、プレイヤー目線だけじゃなくソングライターの視点から曲の意図を汲み取ってくれるし。その上で「ここもうちょっとこうしてみません?」って提案してくれたりするので、二人にお願いして本当に良かったなと」

●LGHはギターボーカル、ドラム、ベースっていう3ピースバンド編成で、ライブで観るとやっぱりシロップを彷彿とさせるようなところもあって。でも音源では基本的にどの曲にも役割の違うギターが2本入ってるじゃないですか。コードを鳴らすバッキング的なギターとウワモノ的なギターみたいな感じで。だから普通に考えればふにゃっちさんの他にもう一人ギタリストを入れて4人編成が自然だと思うんですけど、そうしないっていうのは敢えて3ピースでいきたいっていう何か強い思いがあったりするんでしょうか。

「やっぱりシロップへの憧れっていうのはまず最初にありますね。バンドでやるなら3ピースがいいなっていう。3ピースって必要最低限で余分なものがないから結果的にバンドの良さも曲の良さも剥き出しになる編成だなっていうのがあって。これはペソさんって人の受け売りなんですけど。確かにその通りだなぁって。僕の曲には3ピースじゃ演奏できない曲もあるんだけど、人前でバンド編成で演奏するならあくまで3ピース編成で、その編成に見合った曲を3ピース編成に見合ったアレンジでやりたいなっていうことをLGHっていうバンドでは考えてますね。それで、本当なら今年(2020)はふにゃっちっていうアカウントが生まれてちょうど10周年に当たる年だったのでワンマンライブやりたいなって思っていて」

●おぉー。

「せっかくやるならLGHの3人にキーボーディストを加えた4人編成でも何曲か演奏したいなって考えたりもしてたんですが、10周年を目前にアカウントが凍結されてしまい(笑)、世の中もこんな感じになってしまってワンマンライブは実現できていないんですが、いつかそういう機会を設けたいなって思っています」

●それは、すごい楽しみですね。

「僕の喉がもつ限り、20曲でも30曲でもやりたいっすね。なんていうんですかね…オフ会みたいなライブが一番楽しい(笑)。ライブハウスの隅っこでアニメの話したり。こういうこと言うとまたリスナーの間口を狭めちゃってよくないんだろうけど、ライブハウスがオフ会みたいになると面白くて仕方ないです。ライブをやる意味っていうかバンドをやる意味っていう話をすると、僕はそもそもバンドでライブをしたりCD作って売ったりっていう活動やそれに付随する人間関係に疲れてネットの世界に逃げ込んで一人で曲作って配信でリリースするようになったので、あんまり積極的に人と関わったりライブをやっていきたいというわけではない。でも業の深いことに、そうやって一人で作ってる曲っていうのがあろうことかバンドサウンドだったりするので「この曲を実際にライブハウスでバンド編成で演奏したらどんな風に響くんだろう」って想像しながら作ってる部分っていうのはやっぱりあるんですよ。でも実際にバンドを組んでライブハウスに出演したりCD作ったりって活動するのは、もうしんどいなって思っちゃうんですよ。惰性で続けて、ひたすら疲弊していくだけっていう流れが見えてしまって。「なんで俺だけこんな事やらなきゃいけないんだろう」とか「あいつばっかり目立ちやがって、楽しそうにしやがって」とか「このバンドに俺って必要なのかなぁ」とか。あとはなんだろう、周りの人を見てると「バンドを組んだからには沢山ライブやらなきゃ」「CD作って流通させなきゃ」みたいに、率先して型に嵌っていってるように感じてしまう時があって。でもバンドをやるってのはそういう事なのかもしれないし、上を目指すなら避けられない道なのかもしれないけど、少なくとも僕はもう、そういうことはできないっていうか、littlegirlhiaceではやりたくない、好きなようにやらせてほしい。バンドって自分の意思だけでは動かせないものじゃないですか、それがいくらワンマンバンドであっても。バンドを組んだり、バンドを率いてそういう活動をしていくっていう所に自分のやりたいことが合致しているかっていうとかなり疑問に思うし。そういうのもあって、バンド活動とはちょっと距離を置いています。でもバンドで音を鳴らしたいって欲求は俺の中にあるし、LGHで演奏するのは単純に楽しいし、それを目の前で見てほしい聴いてほしいって気持ちも確かにあって。あとはやっぱり、ライブを観に行くっていうのは、さっき言ったような、その人の音楽に対して自分の限りあるお金とか時間とかエネルギーとかを使うって行為のいちばんダイレクトなものだなって」

●ミュージシャンとリスナーの繋がりの最も根源的というか、本当に具体的なものですよね、会いにきてくれる、同じ空間にいてくれる、目の前にいてくれるっていうのは。

「まぁ僕らじゃなくて別の対バン目当てに来る人だっているだろうし、一概には言えないんですけど(笑)。だからライブっていうのはそういう意味では本当に特別な行為だと思うので、やっていきたいなって気持ちはあります。だから結論として何が言いたいかっていうと…またライブしたいです」

●途中かなり雲行きが怪しかったですけど、その言葉が聞けて安心しました(笑)。またLGHのライブが観たいですし、今後の活動を楽しみにしています。

「本当なら、2020年はライブの年にしたかったんですよね…。あとは、いつかLGHのメンバーで音源作ったりもできたらいいっすね。既存曲にも何曲かバンド編成で録り直したりたいなって思ってる曲あるし。バンドとしての音も残しておきたいなっていう。まっさらの新曲をLGHで録るのも面白そうだけど、一人でやりたいって気持ちも依然として強いのでなんとも言えないです」

●ふにゃっちさんが一人で作った音源上のサウンドとLGHっていう3ピースバンドがライブで鳴らすサウンドで考え方が違うのが面白いと思っていて。だからLGHで音源を作るっていうのは面白くなりそうだなって思います。

「考え方が違う?」

●えっと、ライブでは3ピースバンドにこだわってるけど、一人で音源を作る時は3ピースバンドの編成にこだわっていないっていうか。音源を作る時はギターは絶対に1本しか入れないぞ、みたいには思ってなさそうだなって。

「なんで音源だとギターが1本じゃないかっていうと、レコーディングの工程に理由があって。順番としては最初にドラムを録って、本当はその次くらいにもうボーカルを録っちゃいたい。でもドラムだけだと音程が取れなくて歌えないからドラムの次にコードをじゃかじゃか鳴らしてるギターもしくはアコギを入れるんですよ。そうしてから歌を録って、ベースを入れて、最後にウワモノとして2本目のギターだったり鍵盤を重ねていくっていう。そういう流れで録音していくと必然的にコードをじゃかじゃか弾いてるギターっていうパートが発生してしまうので、それを残すというか、生かす形でアレンジをする感じになって、結果として役割の違うギターが2本ある曲が出来上がっちゃうんですよ。でもそういう曲を、ライブでは3ピースでアレンジして演奏することで音源とはまた違う表情を見せられると思うし。ライブならではの良さというか」

●ライブの醍醐味というか。

「あとは、バンドにもう一人ギタリストがいたとして、その人に自分が弾いたフレーズを教えるのが面倒臭いなって(笑)。だったら音源通りではないアレンジになっちゃうとしても俺一人でギター弾くわって思っちゃう。あとはギタリストが2人いるとバンドの音が、なんていうか…僕の意思ではコントロールできない感じになっちゃいそうで、それはちょっと嫌だなと。だからもし4人編成でライブするならさっきも言ったみたいにキーボーディストを入れたいですね、エルヴィス・コステロみたいに」

 

コステロとアートスクール

●僕フジロックエルヴィス・コステロ観た事があって。

「マジすか!」 

●すごく感動して。その理由っていうのが、あの人ちゃんとギター弾いてるんですよ。ああいうもう初老と言える年齢で大御所みたいな人が、バンドアンサンブルの中で唯一のギタリストとしてジャズマスターを搔き鳴らしてるっていう姿に、良い意味でショックを受けて。

「そういう大御所っぽいポジションの人だったら例えば、自分の影武者みたいなギタリストを後ろに従えてて肝心の本人は弾いてるのか弾いてないのかよく分からない、みたいな感じでも全然おかしくないですもんね。弾きたくなった時だけ弾く的な」

●影武者(笑)。フジロックで確か出番がレディオヘッドの前だったから結構人が集まってきてて、「イギリスの若い奴らの出番まで、おっちゃんの歌もちょっと聴いてってくれよ」みたいな感じで小粋ですごいかっこよかったんですよ。ごめんなさい話ちょっと逸れちゃって。でもあんな大御所みたいな人なのにライブではギターがんがん弾くんだっていうのが本当にカッコよくて。それが今のふにゃっちさんの「ライブではギター弾くのは俺だけでいい」っていう話と重なってちょっとテンションが上がってしまいました。

「個人的にコステロはギターボーカルの一つの理想ですね。めっちゃいい歌を歌いつつギターをギャンギャン掻き鳴らすっていう。ねちっこい所はあるけど。僕じつはコステロと田淵ひさ子に憧れてジャズマスターを買ったんですよね」

●ああいうシンガーソングライター的な人だとギターほとんど弾かないとか、持ってるだけ、みたいな人が多いイメージで、そことは違うんだなっていう。

「それは多分、パンク出身の人っていうのが大きいんじゃないかなって思いますね。DIYの精神が根底に流れているというか」

●ふにゃっちさんもある意味、究極のDIYというか。

「そんなかっこいいもんじゃないですよ…」

エルヴィス・コステロを聴き始めたのもミスチルきっかけ?

「もちろん。単純に声が似てるっていう。「シーソーゲーム」に至っては曲調もPVもモロにコステロだったし。あのくらいの頃のミスチルってそういうオマージュとかパクリの手際が鮮やかで、そういうとこも好きなんですよね。「シーソーゲーム」以外にも、「シーラカンス」はピンクフロイドだし「ラヴ・コネクション」はストーンズだし「Everything」はエアロスミスだし「デルモ」はジャミロクワイだし。

●活動再開直後はレディオヘッドごっこしてましたしね(笑)。

「僕の曲にもバンプオブチキンぽい曲だったりアートスクールっぽい曲があったりしますけど、そういうパクリっつうかオマージュの感覚っていうのもミスチルからの影響かもしれないです。「~ぽい」曲なのにオリジナリティがあってかっこいい曲っていうのが好きなんですよね。アニソンにもそういう曲多いし。ジョン・レノンも「最高のものからパクって最高のものができるならパクってもいいじゃん」みたいなこと言ってたらしいし、本当その通りだと思ってます」

●アートスクールのオマージュっていう話だと、新しい「ギターヒーロー」もイントロの時点ですでに「LOVE LETTER BOX」の…。

「アレンジを全面的にパクってますね(笑)」

●そういう時って、できた曲にたまたまそういうアレンジを試したらハマったっていう感じなのか、それとも最初にネタありきというか、他人のネタをパクるぞってところから曲を作り始めるのか、どっちなんでしょう?

「それは曲によりけりというかケースバイケースで、「ギターヒーロー」は前者のパターンですね。曲ができた時はイントロとAメロが今とはちょっと違うコード進行だったんですが、なんかしっくりこなかったのでいろいろ試行錯誤して、「LOVE LETTER BOX」のコード進行をパクってみたらバシッとハマったっていう感じです。アートスクールからパクると、罪悪感みたいなものが微塵も湧かないのがいいですね。「お前も散々パクってんじゃん」という気持ちがあるので(笑)。アートスクールのオマージュって話だと、Tenkiameからけっこう影響を受けてる自覚があります。夏botくんがギターボーカルでアートスクールのジェネリックを標榜していたバンドで。みんとくんを知ったのも彼がTenkiameのベーシストだったからっていうのもあるし。Tenkiameやってた頃の夏botくんがアートスクールっぽいオリジナル曲を集めたコンピを企画して参加者を募集していて、僕はその頃ちょうど「SCHOOL-DAYS」のイントロのリフを思いついてたタイミングだったんですね。でもそれまではアートスクールっぽい曲を作っても上手くいかないことが多くて、今回もそのまま諦めてボツにしようかなって思ってたんですが、なんか面白そうな企画だし頑張って完成させて参加してみようと。それで完成したのが「SCHOOL-DAYS」で。それ以降、アートスクールっぽい曲を定期的に作るようになったっていう。インターネットでのウケがいいしライブ映えもするし、アートスクールっぽい曲を作ると良いことしかないですね」

●プロというかメジャーのミュージシャンとは別に、ツイッター上で親交のある近しい人から影響受けることも多い?

「めちゃめちゃありますね。メジャーアーティストとかツイッターの知り合いとか関係なく、かっこいいなって思ったらすぐマネしたくなっちゃう(笑)。自分が今やってることって、他の人がとっくに遊び飽きてしまった古いおもちゃを今さら一人で面白がって遊んでるようなもんだと思っていて。アニメの女の子のことを歌うのもそうだし、アートスクールのジェネリックみたいな曲を作るのもそうだし。ネットレーベルの波に乗り遅れたっていうか、あと5年でも早く活動できていたらもう少し違う状況だったんじゃないかってたまに考えてしまうし。やれる事やってくしかないんですけどね。僕よりぜんぜん若い世代のオルタナっぽいバンドが増えてきてるなぁっていう感覚が最近あって、それだけが唯一の救いですかね。俺もオルタナ、やってるよ、みたいな(笑)」

(続く)